「羊をめぐる冒険」の翻訳(68)

「羊をめぐる冒険」の翻訳(68)

第六章  羊をめぐる冒険Ⅱ

1 奇妙な男の奇妙な話(1)(1)



黒服の秘書は椅子に腰を下ろすと、何も言わずに僕を眺めた。くわしく観察する視線でもなければ、なめまわすような視線でもなく、体を貫(つらぬ)くような鋭く視線でもなかった。冷たくもなければ暖かくもなく、その中間ですらなかった。その視線には僕が知っているどのような種類の感情もこめられてはいなかった。男はただ僕を眺めているだけだった。僕の後の壁を眺めているかもしれなかったが、その壁の前には僕がいたから、結局のところ男は僕を眺めていた。

男はテーブルの上のシガレット?ケースを手に取ってふたを開け、両切りの煙草を一本つまみ、先端を爪で何度かはじいて整えて、ライターで火をつけると、煙を斜め前方に吹いた。そしてライターをテーブルに戻して足を組んだ。そのあいだ視線はぴくりとも働かなかった。

男は相棒が説明してくれたとおりの男だった。服装はきちんとしすぎていて、顔は整いすぎていて、指はあまりにもすらりとしすぎていた。鋭い形に切り込んだ瞼とガラス細工(さいく)みたいにひやりとした瞳(ひとみ)がなければ、きっと完壁なホモ?セクシュアルに見えたに違いない。しかしその目のおかげで、男はホモ?セクシュアルにさえ見えなかった。まるで何も見えなかった。誰にも似ていないし、何ひとつ連想させなかった。

瞳はよく見えると不思議な色をしていた。茶色がかった黒に、ほんの少しだけブルーが入って、右と左でその入り方の度合が違っていた。まるで右と左でべつのことを考えているような瞳だった。膝の上で微かに指は働きつづけているのが見えた。僕は今にも十本の指が彼の手を離れてこちらに歩みよってくるような幻覚(げんかく)に襲われた。奇妙な指だ。その奇妙な指がゆっくりとテーブルの上にのびて、三分の一ばかり減った煙草をもみ消した。グラスの中で氷が溶け、透明な氷がグレープ?ジュースに混っていくのが見えた。不均ーな混り方だった。

部屋は一種不可解な沈黙に覆われていた。広い屋敷に入ると時折これに似た沈黙に出会うことがある。広さに比べてそこに含まれる人間の数が少なすぎることから生ずる沈黙だ。しかしこの部屋を支配している沈黙の質はそれともまた違っていた。沈黙はいやに重く、どことなく押しつけがましかった。僕は昔そのような沈黙をどこかで経験した覚えがあった。しかしそれが何であったのかを思い出すまでに少し時間がかかった。僕は古いアルバムのページを繰るように記憶をたぐり、それを思い出した。不治(ふじ)の病人をとりまく沈黙だった。避けがたい死の予感をはらんだ沈黙だ。空気がどことなくほこりっぽく、意味ありげだった。

「みんな死ぬ」と男は僕を見据(す)えたまま静かに言った。まるで僕の心の働きを完全に把握していたようなしゃべり方だった。「誰だっていつかは死ぬんだ」







  穿黑衣服的秘书坐在椅子上,一句话也不说死盯着我。那不是细心观察的视线,也并不是嘀溜溜乱转的视线,也并不是能看穿身体那样尖锐的视线。不冷不热也并不在冷热中间。在其视线之中也并没有包含我所知道的哪一种类型的感情。那男的也只是在盯着我。也许在看着我背后的墙壁。但因为我在墙壁的前面,结果他应是在看着我。

  那男的拿起放在桌子上的香烟,打开盖,拿出一支无过滤嘴的香烟,用手指有几次把香烟的一端害羞地捏捏,用打火机把香烟点着,把烟雾喷向斜前方。然后把打火机回放到桌子上,交叉腿。在这期间他的视线一点也没有动。

  那男的就是同事给我说的那样的男的。服装极其整洁,脸庞也那样极其规整,手指也那么精细。若不是尖形的眼睑和像玻璃精细加工让人打寒战的瞳孔,会绝对让人看成完美的同性恋者。但是因为眼睛的原因,那男的连同性恋都不是。简直什么都不是。模样跟谁也不相似,什么联想也没有。

  若认真看一下其瞳孔,有一种不可思议的颜色。茶色中带有黑色。还溶入了一点蓝色,左右两眼睛所溶入的程度有所不同。好像左右两眼在思考不同的问题。让人看到他的手指在膝盖上轻微地移动着。我被这样一种幻觉支配着,他的十个手指正在离开手而向我这里走着。真是奇妙的手指。那奇妙的手指慢慢地在桌子上伸开,将只烧了三分之一的香烟掐灭。看到玻璃杯中的冰块在溶解,冰溶入到葡萄汁中。溶入的并不均匀。

  房间被一种让人不理解的沈默笼罩着。一但进入到这样宽广的大宅,好像总会表现出这样的沉默。和这个宽广性相对应,这里面的人数少得可怜,沈默就是由此而产生的。但是支配这个房间的沉默的本质和那个沉默并不相同。沉默是那么的沉重,总觉得那么压抑。我记得过去在什么地方有体会那种沉默的经验。这到底是什么呢?等到弄明白还需要点时间。我打开过去档案的影册寻找记忆,终于想出来了。那是包围患有不治之症病人的沉默。包含着回避死亡预感的沉默。感觉到空气中充满灰尘,真是意味深长。

  “大家都会死。”那男的在盯着我的时候安静地说。这完全像是掌握了我的心态的表达方法。“无论是谁总是要死的。”

这位穿西服的秘书,究竟要让主人公做什么呢?
「羊をめぐる冒険」の翻訳(68)

前一篇:「羊をめぐる冒険」の翻訳(69) 后一篇:「羊をめぐる冒険」の翻訳(75)

Advertisements


随心学


蒸し暑い   むしあつい      闷热

本站小程序


提供日语翻译、文字识别、中日词典、日中词典、日文歌词等功能,同时还有其他众多实用工具。